有機栽培可能な果樹

無農薬栽培・有機栽培ができる果樹

筆者が実際に栽培した体験をもとに、難有れど有機栽培ができる果樹を紹介します。果樹の無農薬栽培は、品質を求めなければ少しは栽培可能ですが、栽培3年目あたりから農薬の必要性を感じ始めました。

ブルーベリー・ラズベリー・ブラックベリー

完全に病気を防ぐことは不可能ですが、趣味栽培ならブルーベリーの有機栽培が可能です。害虫はショウジョウバエ、カイガラムシ、コガネムシ、アオバハゴロモ、スリップスくらいです。しかしブルーベリーはいったん病気に罹りますと有機栽培では回復が難しいです。

ブルーベリーの無農薬栽培
無農薬ブルーベリー
筆者栽培

防虫ネット(筆者は100円ショップの回収ネット)を鉢に巻き付けてコガネムシを予防します。同じようなことは誰でも考えるみたいでこの方法は筆者などの栽培家のブログを通して広まっていきました。防虫ネットや防風ネットの切り売りでもよいでしょう。ブルーベリーの商用有機栽培の安定生産は、細菌病や害虫の発生が読めませんので未感染苗のハウス隔離栽培以外では疫病が蔓延する可能性も否定できず難しいかもしれません。

イチジク

イチジクも栽培容易で農薬を必要とせずに栽培することが可能です。害虫はアオバハゴロモの吸汁とアリやスズメバチ、コガネムシです。有機栽培では株枯病を防ぐことは難しいかもしれません。ハウス栽培でなければイチジクの商用有機栽培は厳しいと思います。

イチジクの無農薬栽培
イチジクの無農薬栽培
筆者栽培

セレスト系は雨天耐性があるので小粒ですが1本持っておくとおすすめです。FMV未感染の株を入手するには品種を限定して栽培しているナーセリーか、国産交配品種のとよみつひめのような品種がおすすめです。多品種を栽培しているナーセリーは疫病への感染株のリスクが高まりすでにキャリア株であると思ったほうがよいでしょう。

レモンなどの柑橘類

レモンの害虫はアオムシでバチルス菌抽出物の効果があり有機栽培可能です。ほかにはダニやカイガラムシが発生します。油断するとすぐにアオムシにより丸坊主になって翌年結実しなくなります。BT剤は死菌(トアロー水和剤)からはじめたほうが安全で、花後の1回や結実させない年以外は手作業でアオムシを取り除くことをおすすめします。間違ってもBT剤を開花中や皮を調理に使う柑橘類に使わないようにしましょう。一応、毒で汚染物ですので人体に入ると本末転倒になります。ミツバチなどの訪花昆虫への影響があります。栽培してみたところ、有機栽培の柑橘類の商用栽培は果実袋を使えばそこそこ可能と思います。

無農薬レモンの栽培
無農薬レモンの品質(筆者栽培)
筆者栽培

袋掛けなし、鉢植えでの無農薬レモンの品質です。

ポポー(ポーポー)

ポポーの害虫はアオバハゴロモという吸汁性害虫などです。葉は強健で病気に強く、農薬は必要ありません。おそらくポポーステマによる流行も消費者が味を覚えてしまえば一時的なものとなるでしょう。

ポポーの無農薬栽培
ポポーの無農薬栽培
筆者栽培

ポポーは2~3果に摘果すると、大きさが揃います。


ポポーの無農薬栽培
ポポーの無農薬栽培
筆者栽培

ポポーの無農薬栽培の料理
ポポー料理
筆者調理

ポポーの味は・・・( ^ω^)・・・
まずいとは、とても・・・言いたくないけど・・・・・・・。

柿(やや難しい)

柿もまた有機栽培可能ですが、吸汁性害虫などがヘタに集中し果皮にススが着くので品質は劣るしそれに対する夏季の有機栽培用の農薬はありません。納得のうえ個々の家庭で食べるなら無農薬・有機栽培可能です。落葉病に対して梅雨のボルドー剤散布が効きました。柿の商用有機栽培は可能といえますが、へたにつく害虫をどう取り除くか次第だと思います。果実袋をうまく使う方法を模索する必要があるかもしれません。

無農薬柿の収穫
無農薬(当時)柿の収穫
筆者栽培

柿の品質は害虫次第です・・・。

ビワ(簡単)

ビワは無農薬で袋掛けをすると、そこそこの品質のものが収穫可能です。袋掛けをする場合は風対策で粗目のネットを掛けないと果実品質が低下します。ビワの無農薬栽培は可能ですが、やはり完熟は日持ちせず大手宅配便で輸送中にボロボロに傷んでしまいましたので、よくて近所の直売所あたり、ビワ専用での輸送の特別な配慮がないとオーガニック販売の限界があるように思います。

ビワの無農薬栽培
ビワの無農薬栽培
筆者栽培

カリン・マルメロ(難しい)

果実の果皮が硬くつるつるしているので、果皮は汚れるが果肉まで食害されることは滅多にない。赤星病のようなものが発生します。毛虫が梅雨と秋雨の時期に発生し、大きなアブラムシの吸汁性害虫も発生するので本質的には有機栽培は無理ですが、果肉のみを食用とする場合は栽培可能です。のどに良いらしいが加工に大量の砂糖や酒を必要とするため健康目的での栽培のメリットは感じづらい。正直いってBT剤(の死菌)を使うほどの価値があるかどうかというと・・・。声を売りにする業界ではオーガニックのカリンの市場はあると思いますが、いかに果皮を果実保護袋を二重にして保護するかが課題だと思います。しかしカリンは何件も農家が競って栽培するような果樹ではありませんので、格別で献上できるような美麗品の有機栽培技術が欲しいところです。

カリンの無農薬栽培
カリンの無農薬栽培
筆者栽培

カラスにすべて果実袋を暴かれカリンはこのようになりました( ;∀;)

ブドウ(難しい)

ブドウの有機栽培には梅雨時期の高湿度と雨と害虫との接点を持つことが厳禁です。つまりビニールによる隔離栽培にといてはブドウは有機栽培可能です。それ以外はちょっと無理があるかな、と実際に栽培して実感しました。慣行栽培でも袋掛けなしの状態ではかなり花穂の軸の部分が汚くなるのできれいなブドウを食べるには袋掛けは必須です。高級品種なら栽培のメリットはあってもデラはコスト面でメリットがないと思います。梅雨時期にボルドーを2回ほど散布するほかは、炭酸水素ナトリウムなどで葉を洗う程度にしておいたほうが無難。秋季の葉は雨に当たっても病気になりにくい(筆者庭園では秋雨では病気にならなかった)ことが観察してわかりました。

ブドウの有機栽培
袋掛け、傘かけ(100円ショップの素材使用)必須です。
熟期の確認用に出来の悪い房に透明袋を掛けた様子です。
筆者栽培

有機栽培のブドウ
ジベレリン使用なので厳密には有機といえないブドウ
筆者栽培

さすがに無農薬というわけにはいかず、ボルドーとジベレリン1回を使用。
ジベレリン2回目もすればよかったと後悔。

リンゴ・ナシ(超難しい)

リンゴは品種によっては有機栽培可能と思われます。加工用の酸っぱいリンゴや、ビニール内での隔離栽培ならいけるんじゃないかと思います。しかしリンゴは年中小売店に出回っているので無理して栽培するメリットはあまりないかも。梨の有機栽培が難しいのはビニールで囲えないし、費用がかかる面で難しいといえましょう。露地栽培はBT剤(の死菌)が効くかどうかにかかっているかな。しかしBT剤も何度も散布すると残留農薬の残存量が高まりますのでそこまでして栽培する価値があるかどうか。有機栽培用の農薬散布は本来の趣旨に近づけるためにはせいぜい年3回程度が上限でしょう、と私は思います。いざとなれば慣行栽培も検討できる覚悟で栽培したほうがいいかも。

アルプス乙女リンゴの有機栽培
アルプス乙女リンゴの有機栽培
筆者栽培

植えつけて年数が浅く、まだ収穫には至ってません。

実梅(やや難しい、早生品種と早摘み必須)

梅の収穫時期がちょうど梅雨にあたりますので、無農薬の場合は雨が当たった場所の果実に斑点が発生し、害虫の幼虫が梅の果実内を食害しアブラムシの排泄物で果皮が汚れます。これを阻止するためには早生品種を導入するか、大玉で早い時期に粒が肥大する品種など、可能な限り早期に実が大きくなる品種を栽培し、本来の収穫時期よりおよそ30日早く収穫する必要があります。特に豊後系の有機栽培は香りが素晴らしく果肉が柔らかいので昆虫にも人気がありますのでやめておいたほうがよいでしょう(苦笑)。アブラムシの発生密度を抑制するにはデンプンの散布が有効で、カリウムや炭酸水素も初期の発生に効果がありましたが、デンプンはカビますのでそう何度も使える手ではなく、初期の発生をいかにタイミングよく抑え、その後も新芽を摘心し続ける必要があります。梅酒・梅ジュース用は上記の栽培方法が可能ですが梅干しを作るためには完熟手前まで待つ必要があり、市販の品種と同様品質での栽培は不可能です。

有機栽培の実梅
有機栽培の実梅
筆者栽培

冬季のマシン油と樹皮削り、春季にデンプン、炭酸水素ナトリウム、摘心の繰り返しでこんな感じです。油断するとすぐにアブラムシが出ますので、風通しをよくするを心がけましょう。

桃・スモモ(やや難)

桃とスモモの有機栽培は、雨よけ栽培によって可能です。アブラムシの発生初期、開花が終わったあたりからデンプンを散布し発生密度を抑えます。カリウムも効果があるように思いました。デンプン→カリウム→炭酸水素ナトリウム(洗浄効果)といき、雨よけ、二十袋掛けするのであれば、十分に収穫達成可能でした。冬季はカイガラムシ用の農薬と、殺菌剤(筆者の場合イオウフロアブル)の散布や塗布は必要です。アブラムシの初期の発生段階で壊滅できればその後は何も対策不要でも発生しませんでした。しかし毛虫は発生しますので、見つけ次第捕殺しなければなりません。雨の日に軒下に入れると糖度が低くなりますので、雨よけビニールが望ましいです。

桃の無農薬栽培
桃の無農薬栽培
筆者栽培

桃の無農薬栽培
無農薬でも品質良好です。
筆者栽培

桃の無農薬栽培
品質良好ですが、軒下に入れていた分、糖度が低いです。
コンポートにすると糖度を補充できます。
筆者栽培

栗(難しい)

栗の有機栽培では害虫を抑制することはできません。クリタマバチ耐性品種もいくつかあるようで、虫害のない栗の実を食用とするのが無難です。最大といわれる西明寺栗を栽培してみたいところです。

栗の無農薬栽培
栗の無農薬栽培(筆者の育成したオリジナル品種)

執筆後記

無理して有機栽培が難しい果樹を栽培するよりも、簡単な果樹の品種を多くし、難しい果樹の品種は厳選した2品種程度にしたほうが苦労も少ないです。栽培の楽しみや苦労がどのようなものかは筆者のブログ「おうちで鉢植え栽培」に詳しく書いています。栽培方法は「おいしい鉢植え果樹の栽培育て方」で説明しています。何年もの努力(遊び)がようやく収穫が実り始めて有難いことです。また、よくある「何たら流栽培方法は安心♪」みたいな罠にはまらないようにしましょう。有機栽培とはいえ雑草はタマネギなどにとってライバルである場合がほとんどであり、冷静に考えたら自分でも野菜くずや米ぬかと水と砂糖などを混ぜて酵母を起こせる方法がわかるはずです(アルコール度数に注意です)。草生栽培が可能であるのは、目当ての植物が地中深くに根を下ろす直根性品種に限られ、ブルーベリーのような浅根品種は雑草と共存することはできません。木酢やバーミキュライトや人造焼成石を使わないほうがよいことも少し考えればわかることです。筆者が思うに有機栽培は慣行栽培と同様にいかにウイルスや細菌、害虫から植物を防御・隔離するかという考え方は同じで、慣行栽培と同様に栽培技術と呼べるような栽培技術を編みだす必要があると考えています。同時にオーガニック栽培の信頼性を高めるためにはエセ科学、エセ栽培法との隔絶が必要だと思います。現時点では有機栽培に何をどれくらい使っているかわからない不信感があり、有機栽培にも菌抽出物などの毒素などの残留農薬や免疫次第では安全ではない米や乳アレルギー物質を含む方法がありますので、それらをすべて公開してこそ消費者の信頼も得られるのではないかと思います。